2022年7月29日
C1100の材質とは?概要(特徴や物性)や加工に解説
C1100の材質は、純銅ならではの様々な特徴があります。
C1100はタフピッチ銅とも呼ばれており、導電材料としてよく使われている金属材料です。
一般的によく使われているC1100ですが、条件によって脆くなる場合があるため、取り扱う際には正しい知識が必要です。
材質について知識や理解を深めることは設計や加工において重要です。
今回はC1100の特徴やメリット、物性などの材質に関する情報を解説します。
更に加工についても、東京都大田区の金属加工会社エースがご紹介します。
C1100はどんな材質の金属?
C1100はどのような材質なのでしょうか。
C1100はタフピッチ銅のことで、銅のJIS規格の記号として「C1100」と表記されている非鉄金属です。
(Cxxxxの「C」はCopper(銅)の頭文字で、次に数字が続きます。)
C1100は純銅のひとつで、化学成分は、銅(Cu)は99.90%以上で、熱伝導性や通電性をはじめとした様々な点で優れています。
光沢があり、赤みがかった色が美しい金属で、様々な目的で使われている一般的な金属といえるでしょう。
C1100(タフピッチ銅)の他の純銅の種類
話はタフピッチ銅から少しだけ逸れますが、ここで純銅について簡単にご紹介しましょう。
銅と一口に言っても色んな種類があり、その中で純銅は99.9%以上の純度の銅のことを指します。
脱酸の違い(銅から酸素を取り除く作業)によって酸素の含有量が異なり、この酸素の量によって3種類の純銅に分けることができます。
【純銅の種類】
・無酸素銅(C1020)
・タフピッチ銅(C1100)
・リン脱酸銅(C1220)
これらの純銅の材質の違いは通電性の高さや、この後ご紹介する水素脆性(ぜいせい)の起こしやすさなどの違いが挙げられます。
C1100(タフピッチ銅)の特徴やメリット
C1100(タフピッチ銅)の材質の特徴やメリットとはどのようなものなのでしょうか。
ここではC1100の材質の特徴や長所(メリット)についてご紹介します。
C1100は最も流通している純銅ですので、材質や良さについて、多くの設計者さんや加工業者さんがご存知だと思いますが、身近な素材の基礎知識の復習としてご参考ください。
C1100の材質の特徴やメリットは以下の3つが挙げられます。
【材質の特徴】
・熱伝導率、導電率が優れている
・高い加工性
・耐食性があり、錆びにくい
他の純銅の材質との共通点、違いに触れながら、詳しく解説します。
熱伝導率、導電率が優れている
最初にご紹介する材質の特徴は、熱伝導率や導電性の高さです。
C1100の中に含まれている酸素には導電を妨げる物質を取り除く働きがあるため、非常に通電性に優れているのです。
この通電性の高さは、C1100よりも銅の純度の高い無酸素銅と同等と言われています。
また、熱伝導率にも優れているという材質の特徴もあります。
アルミニウムよりも熱伝導率が高い材質であるため、調理器具などで使われる場合もあるようです。
導電性、熱伝導率に優れているという材質の特徴から、電線や機械部品として使われています。
高い加工性
C1100は融点が低い材質の特徴があるため、加工性にも優れています。
銅の加工は昔から行われており、曲げ加工、絞り加工、展伸(てんしん)加工が簡単に行うことができます。
切削加工も可能ですが、いくつかの注意が必要です。
C1100は軟質で粘り気があり、バリが出やすいため、切れ味が良い銅に適した工具で高速の切削速度で加工を行うと良いでしょう。
また、他の金属と比べると溶解温度が低いため、刃に溶着しやすい特徴があります。
溶着を防ぐため、油性のクーラントを使用して切削加工をすることをお勧めします。
耐食性があり、錆びにくい
C1100は耐食性に優れており、錆びにくい点も材質の特徴です。
空気に触れると酸化物の被膜ができ、腐食(錆)の進行を防ぎます。
金属加工の話から少し逸れますが、古代の銅製品が出土されたときに、形が保たれたまま発掘されることが多いのは、この耐食性によるものといわれています。
このような錆びにくい材質のため、水に触れるような場所や目的でも多く使われています。
しかし錆びを防止する酸化被膜は、厚さによって銅の表面が変色します。
銅の持つ美しい色合いが変わってしまう為、装飾目的として使う場合は大きな課題となるでしょう。
C1100(タフピッチ銅)の注意点(デメリット)とは?
C1100(タフピッチ銅)を扱う際の注意点(デメリット)をご紹介します。
C1100は他の純銅と異なる材質があるため、取り扱いに気を付けたいポイントがあります。
一般的に使われている親しみのある金属ですが、使用する際の注意点としてご参考ください。
変色など仕上がりの問題
C1100に限らず、すべての銅に当てはまることですが、酸素や水に触れると銅は錆びて変色します。
耐食性が高いので錆の進行はしにくい材質ですが、一方で変色のしやすさは注意点として挙げられる点です。
また、切削加工において水を使用するため、ワークに跡が残る場合があります。
銅という素材が高級材にあたるので、見た目が重要視される装飾品のような製品の場合には、こうした仕上がりの問題に注意をし、慎重に取り扱うと良いでしょう。
また、銅の加工を発注する場合には、加工会社に「仕上がり重視」であることを予め伝えておくこともお勧めいたします。
水素脆化が起こることも
純銅は前述した通り、酸素含有量によって種類が異なります。
タフピッチ銅にも微量の酸素(約0.02~0.05%)が含まれています。
ですが、この酸素によって水素脆性(すいそぜいせい)が起こる場合があります。
水素脆性は水素脆化(すいそぜいか)とも呼ばれており、金属の強度が落ちて破壊したり、脆くなってしまう現象を指します。
タフピッチ銅の場合、600度以上の高温状態になると、内部に含まれている酸素(酸化銅)が水素と反応し水蒸気が発生し、内部に空洞ができるため強度が下がって割れなどの現象が起こります。
こうした特徴から、タフピッチ銅は溶接や熱間鍛造などには適しておらず、製作過程で高温加熱をしない部品や製品に適していると言えます。
もし溶接を行う場合は、酸素含有量が少ない無酸素銅(C1020)を使用すると良いでしょう。
水素脆性は水素が金属に吸収されて起こるもので、タフピッチ銅に限らず様々な金属で起こります。
水素脆化は品質低下、不良品率の増加に繋がるので、発生しないように注意が必要です。
純銅を使う製品で高温加熱の加工を行う場合には、タフピッチ銅ではなくリン脱酸銅や無酸素銅を選択することをお勧めいたします。
もし材料の選定でお悩みでしたら、お気軽に当社営業までご相談ください。
強度が低く、粘り気がありバリが出やすい
切削加工でもご紹介しましたが、タフピッチ銅を含め、銅は粘り気があって切削時にバリが出やすい特徴があります。
工具への溶着も起こりますので銅専用の工具を使用するほか、切削時の温度にも注意を払う必要があります。
また、強度があまり高くないのも銅の特徴のひとつです。
タフピッチ銅の引張強さは245以上程度ですが、鉄は400~510(N/mm^2)(※)と明らかな差がある事がわかります。
※SS400の数値です。
このように強度が低いタフピッチ銅ですが、加工硬化を起こすので強度が向上します。
(加工硬化とは、金属に力を加えることで硬くなる現象の事です。)
加工率が約80~90%のものをH(硬質)、約40%のものが1/2H、約20%のものを1/4Hとなります。
焼きなまし後の場合はO(軟質)と質別されます。
C1100(タフピッチ銅)の主な用途
C1100(タフピッチ銅)は一般的に使われている素材です。
一般的に以下の用途で使われています。
・電線、銅線・プリント基板・バスパーなどの導電材料
・自動車用部品
・機械部品 など
導電性が高い材質のため、電線など導電用の材料として身近な場所で使われています。
C1100の機械的性質と物理的性質
C1100の機械的性質と物理的性質についてご紹介します。
参考値としてご覧ください。
機械的性質
C1100 O
厚さ(mm) | 引張強さ | 伸び(%) | 硬さ |
0.10~0.15 | 195以上 | 20~ | – |
0.15~0.50 | 30~ | – | |
0.50~3 | 35~ | – |
1/4H
厚さ(mm) | 引張強さ | 伸び(%) | 硬さ |
0.10~0.15 | 215~285 | 15~ | 55~100 |
0.15~0.50 | 20~ | ||
0.50~3 | 25~ |
1/2H
厚さ(mm) | 引張強さ | 伸び(%) | 硬さ |
0.10~0.15 | 235 | – | 75~120 |
0.15~0.50 | 10~ | ||
0.50~3 | 245~315 | 15~ |
H
厚さ(mm) | 引張強さ | 伸び(%) | 硬さ |
0.10~0.15 | 275以上 | – | 80以上 |
0.15~0.50 | – | ||
0.50~3 |
物理的性質
C1100の物理的性質は以下の通りです。
比熱 | 385 |
比重 | 8.89~8.94 |
熱膨張係数 | 17.7 |
熱伝導度 | 391 |
体積低効率 | 0.0171 |
導電率 | 101 |
縦弾性係数 | 118 |
C1100(タフピッチ銅)の加工はエースにご相談ください
C1100(タフピッチ銅)の材質や用途、特徴などをご紹介しました。
正しく材質を知ることは、モノづくりにおいてとても重要です。
また、タフピッチ銅の加工を発注する際には、材質のことを良く知っていて、加工が得意な加工会社に依頼することも大切なポイントです。
品質はもちろんのこと、加工コストも工場によって変わってきますので、業者選定の際には、タフピッチ銅の加工が得意かどうかをチェックする事をお勧めいたします。
ですが、加工が得意な工場を探すのはなかなか難しいかと思います。
弊社、株式会社エースは自社工場を所有しているほか、全国に300社を超える工場とのネットワークがあるので、あらゆる材質、加工に対応しております。
全国の工場の得意分野を把握しておりますので、様々な材質の加工のご相談を承ります。
タフピッチ銅の加工はもちろん、治具や部品の加工など、モノ作りで何かお困りのことがございましたらお気軽にお問い合わせください。
ご発注から納品まで、ワンストップでご依頼いただけるので、業務負担の軽減に関するご相談も承ります。
※大きいサイズの加工をご要望の際には、別途ご相談ください。
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