2022年9月28日
C1020の比重などの物理的特性をまとめてご紹介
C1020の比重などの物理特性を見ると、熱伝導性が高くアルミなどの軽い素材に比べて重い材質であることが分かります。
そのため自動車部品や電子機器の部品などには使用されるものの、比重が大きいため生活用品などにはあまり使用されません。
材料選定の際は、製作内容・用途・加工方法に比重の大きさなど様々な性質が適しているか考慮した上で選びます。
この記事ではC1020の比重を中心に、物理的特性や機械的特性、成分などもあわせて解説します。
物理的特性とは、熱・電気・重さなどに対する素材の性質のことを指します。
比重 | 熱膨張係数 【10-6/K】 |
熱伝導率 【W/(m・K)】 |
導電率 【%IACS】 |
体積抵抗率 【μΩm】 |
比熱 【J/(Kg・K)】 |
縦弾性係数 【kN/m㎡】 |
---|---|---|---|---|---|---|
8.94 | 17.7 | 391 | 101 | 0.0171 | 385 | 118 |
※小さい画面では表を横にスクロールできます。
表にある「比重」とは、C1020の密度と4℃の水の密度との比の値です。
銅の比重はおおむね7.5前後から8.9前後に収まりますが、C1020の比重は8.94と、銅の中でも比重の値は大きいです。
その他、「熱伝導率」は熱の伝わりやすさを、「導電率」は電気の伝わりやすさを表す値で、どちらも高い数値です。
そのため、C1020の物理的特性は比重が高く、熱や電気を伝えやすいことが分かります。
C1020の機械的特性もあわせてチェック
C1020の機械的特性を見ると、柔らかい素材であることが分かります。
機械的特性とは、引張り強さ、伸び、硬さ、曲げなど、外部からの力に対する素材の性質のことを指します。
下の表にある「引張」とは、材料が引っ張る力に対する抵抗力の大きさの値です。
「伸び」とは、材料が伸びて切断した時の長さから元の長さを引いた値を、元の長さで割った値です。
「硬さ」とは、外からの力による変形に、材料が耐えることができる抵抗力の大きさの値です。
C1020は柔軟性に優れているため、その機械的特性は伸びやすく、曲げやすいのです。
質別 | 厚さ【mm】 | 引張【MPa】 | 伸び【%】 | 硬さ【Hv】 | 曲げ | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
厚さ【mm】 | 曲げ 角度 |
内側 半径 |
|||||
O | 0.10〜0.15 | 195以上 | 20以上 | – | 2.0以下 | 180° | 密着 |
0.15〜0.30 | 30以上 | ||||||
0.30〜3 | 35以上 | ||||||
1/4H | 0.10〜0.15 | 215〜285 | 15以上 | 55〜100 | 2.0以下 | 180° | 厚さの0.5倍 |
0.15〜0.30 | 20以上 | ||||||
0.30〜3 | 215〜275 | 25以上 | |||||
1/2H | 0.10〜0.15 | 235〜315 | – | 75〜120 | 2.0以下 | 180° | 厚さの1倍 |
0.15〜0.30 | 10以上 | ||||||
0.30〜3 | 245〜315 | 15以上 | |||||
H | 0.10〜0.15 | 275以上 | – | 80以上 | 2.0以下 | 180° | 厚さの1.5倍 |
0.15〜0.30 | |||||||
0.30〜3 |
※表を横にスクロールできます。
C1020(無酸素銅)の成分表
C1020の成分は、99.96%以上が銅(Cu)です。
つまり素材のほとんどを銅が占めています。
これを純銅と言います。
純銅は酸素含有率が低く、比重が大きいのが特徴です。
また純銅は、精錬工程で残った酸素の含有率によって、無酸素銅、タフピッチ銅、リン脱酸銅の3種類に分けられます。
C1020はその中でも無酸素銅に分類され、酸素含有率は0.001%以下、比重は8.94です。
また、タフピッチ銅に分類されるC1100の酸素含有率は0.02%~0.05%、比重は8.89です。
リン脱酸銅に分類されるC1201やC1220の酸素含有率は0.01%程度、比重は8.94です。
このように同じ純銅でもそれぞれ成分は異なるのです。
Cu | Pb | Fe | Sn | Zn | Al | Mn | Ni | P | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
99.96以上 | – | – | – | – | – | – | – | – | – |
※小さい画面では表を横にスクロールできます。
C1020の特徴
C1020の特徴は比重が大きく、導電性や熱伝導性、加工性といった特性に優れます。
高純度の銅であるため、電気や熱を通しやすい素材です。
また、高温時に水素が内部に侵入して強度を劣化させる、水素脆化を起こしにくい素材でもあります。
比重が大きいなどの特長の他にも、柔らかい素材のため切る、曲げる、伸ばす、接合するということが容易にできます。
もし用途に対して純銅では柔らか過ぎる場合には、高度を上げたクロムなどを含有する合金が使用されます。
これらの特性から、電子・電気機器、音響機器、熱交換器、また、溶接やろう付けを必要とする部品に使用されます。
C1100との違い
C1020とC1100の違いは、精錬工程と、素材特性にあります。
まず精錬工程では、脱酸の方法が違います。
C1020は高純度の電気銅を用い、還元性雰囲気溶解により脱酸します。
C1100は、溶解した電気銅に挿入した、生木の有機物により脱酸します。
その結果、C1020は酸素含有率が0.001%、比重が8.94。
一方でC1100は酸素含有率が0.01%、比重が8.89になります。
比重はほとんど変わりませんが、C1100は酸素含有率が高いため、高温環境下で水素脆化が起こりやすくなります。
また比較的安価であるため、高温環境下で使用されない導電材料に使用されます。
一方でC1020は高温にも耐えられ、なおかつ誘電性が高いため、高温環境下の伝導材料や高い誘電性を求める場合に選ばれます。
下記の記事で比較した材質について詳しくご紹介しておりますので、ご参考ください。
C1100の材質とは?成分や物性、加工のポイントについて解説
銅はご説明した通り、種類によって性質が違い、それぞれに適した加工や用途があります。
部品などの製作において材料選定にお悩みの方はお気軽にエースへご相談ください。
当社は、材料選定のご相談から部品の加工~組立までご依頼を承ります。
C1020の加工性について
C1020は、展延性、絞り加工性、耐食性、耐候性に優れています。
まず、柔軟に伸ばしたり変形させたりしやすい展延性、そして素材をたたいて凹状や容器状にしやすい絞り加工性に優れています。
ただし、切削時にバリがでやすく工具へ溶着することがあるため、専用の道具を使用するなど環境を整える必要があります。
また切削加工においては水を使用するため、変色しやすいという難点があります。
もし加工を依頼する場合は、あらかじめ加工業者に仕上がりについてご相談するとよいでしょう。
さらに、腐食しにくい耐食性、日光や悪天候にさらされても変色変形しにくい耐候性にも優れ、大変加工しやすい素材です。
反面、無酸素銅は展延性や絞り加工性が優れているがゆえに、強度が劣ります。
したがって、過度な負荷を加えると破損する可能性があり、設計や材料選定の際はその点に注意が必要です。
エースではC1020の加工が可能です
C1020の加工業者をお探しの方はぜひエースへお問合せください。
C1020はその特性から、通電性や溶接性を求める場合に使用しますが、当社は溶接のご依頼にも対応しております。
ただC1020は加工時に変色しやすいなどの懸念があります。
もし仕上がりを綺麗にしてほしい、バリを抑えてほしいなどご要望や不安などございましたらお気軽にご相談ください。
当社は自社工場の他に、全国の300社以上の製造業者と協力体制にあります。
そのため、他社で断られた内容でも柔軟に対応します。
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