2022年8月19日
材質S45Cとは? 特徴や用途を解説
材質S45Cとはどういったものなのか、その特徴や用途をご紹介します。
材質S45Cとは、JIS規格で定められた機械構造用炭素鋼です。
Sはスチール、Cは炭素を表しており、この45とは炭素量が0.45%であることからS45Cと表します。
また、機械構造用炭素鋼であるS50C、S48Cを総称するときにS45Cと表すこともあります。
S45Cは流通量が多く、比較的安価な材質です。
そのため用途は幅広く、構成部品やピン、ボルトなどに使用されます。
エースではS45Cの加工、またこの材質を使用した治具やユニットの製作が可能です。
他の会社で加工が難しいと断られた内容でも、まずはご相談ください。
ここからは、S45Cとは一体どのような性質を持っているのかについて詳しくご紹介します。
材質選びに悩んでいる方、材質を詳しく知りたい方はご参考ください。
S45Cの組成
S45Cの組成をご紹介します。
材料の組成とは、化学成分のことを指します。
■S45Cの組成(JIS G4051)
組成(化学成分) | C | Si | Mn | P | S |
成分値(%) | 0.42~0.48 | 0.15~0.35 | 0.60~0.90 | 0.030 | 0.035以下 |
この表を見ると、五大元素すべての成分が含まれていることが分かります。
そもそも炭素鋼とは、この五大元素だけで構成されている材料であり、C(炭素)の量が多ければ多いほど硬い材質になります。
硬さに関しては後ほど詳しくご説明します。
SS400と比較
SS400はS45Cと同様に、加工に優れたとてもオーソドックスな材質です。
また二つともよく流通している材質ですが、それぞれに特徴があるので確認しておきましょう。
SS400は鉄鋼材の一種です。
炭素はJISで規定されていませんが、多少の引っ張り強度を保つために0.15%ほどの炭素を含むことがあります。
しかしそれでも、S45Cの組成と比べると分かるように、軟らかい素材です。
■SS400の組成(JIS G 3101)
組成(化学成分) | C | Si | Mn | P | S |
成分値(%) | – | – | – | 0.050以下 | 0.050以下 |
また、SS400は安価で溶接が可能な材質ですが、焼入れには適していません。
なぜなら焼入れには一定の炭素量が必要なのですが、SS400は炭素量が規定されていないからです。
当社には材料に対して、焼入れなどの加工が適しているかご相談することも可能です。
S45Cの生材の硬度(HV)・硬さ・せん断強度(機械的性質)
S45Cの硬度(HV)・硬さ・せん断強度についてご紹介します。
硬度(硬さ)とは材料が持つ力学的特性の一つで、機械的性質に分類されます。
炭素を含んだ材質なので、組成を見ても分かる通りSS400よりも硬度があります。
熱処理で表面を硬くすることができるため、熱処理後は引張強さなどの強度や硬度がさらに上がります。
JIS規格 | 焼入れ前 | 焼入れ後 |
HV | 220~280 | 600~750 |
Hs | 32~40 | 74~85 |
HRC | 16~27 | 55~62 |
※HS・HRCはHVを換算したおおよその値です
※条件によって数値は変わります
用途や目的によって生材か調質材を使うか(もしくは調質するか)検討します。
生材の方が安くて加工の工程数が少ないため、なるだけコストをおさえて製作する場合(試作など)や、スピードを求められる場合は生材が使用されます。
一方で、ピンやボルトなどある程度硬度が必要な場合においては熱処理を施します。
せん断強度に関しては、引張強さ(690N/㎟以上)の0.7倍だといわれています。
ただこれは非常におおまかな数字ですので、ご参考程度にとどめておいてください。
S45CHの硬度は?
S45Cの種類の中にはHがついているものがあります。
S45CHのHとは、Heat Treatedという意味があり、熱処理した材料のことを表す質別記号です。
これは生材か、それとも何らかの処理を施したものなのかを判別するための表記ですので、Hがついているということは熱処理したものであることを示しています。
そのため、硬度に関しては先ほどご紹介した焼入れ後の硬度をご参考ください。
ちなみに、業者によっては(H)と表記したり、丸印の中にHと表記する場合もあります。
また、その他にも熱処理方法によってHとは別の記号が使用されます。
調質材の硬さや表示方法については下記URLの記事で詳しくご紹介しておりますので、ご参考ください。
生材を使用するのか、調質材を使うのか、焼入れで仕上げたほうが良いのかなど、どういった選択をするのかについては加工内容やご要望によって異なります。
当社ではご依頼内容やご要望にあわせて最適なご提案をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
S45Cの密度・比重・磁性(物理的性質)
S45Cに近い物質の密度・比重・磁性をご紹介します。
密度・比重・磁性とは、物質を表す性質のことで物理的性質に分類されます。
S45Cは真鍮などに比べると軽い素材ですが、樹脂やアルミ合金ほど軽い材質ではありません。
■密度と比重
密度 | 7.84 |
比重 | 7.84 |
またS45Cは磁性のある材質で、焼入れにより保磁力があがります。
そのため、固定するときにはマグネットが使用されますが、焼入れしたものは脱磁しにくい傾向があるので必要に応じて脱磁器を使用します。
※脱磁器とは、磁化した材質から磁気を除く機器のことです。
磁気のないところでは磁性を失う純鉄とは違い、鋼材ですので磁化すれば永久磁石になります。
ただ吸着力に関してはSS400ほどの力はなく、磁化したとしてもクリップが1つ吸着する程度の磁力です。
S45Cの板厚とは?
S45Cの板厚は材料を取り扱う業者によって様々です。
まずはどのような形状の材料が流通しているのか見ていきましょう。
■主に流通している材質の形状
S45C | 線材、丸棒、ミガキ材 |
S50C | 板材 |
S48Cは1バッチ(窯)分をオーダーすることによって入手することができます。
ただし炭素量の範囲がS45CやS50Cと変わらないため、主にこの2種類が流通しています。
実際に材料を取り扱う業者へオーダーする際は、指定された範囲の奥行き(L)に対して、厚み(T)と幅(W)を規格表から選ぶのが一般的です。
例えば、
S45C(ミガキ平鋼)の板厚はおよそ3mm~50mm前後まで。
S50Cの板厚はおよそ6mm~50mm前後まで対応しているところが多いです。
ただ幅を指定する際に、その板厚が対応していない場合もあるのでご注意ください。
例えば業者によっては、3mm(T)×13mm(W)×50mm(L)は可能でも、3mm(T)×10mm(W)×50mm(L)は不可というところもあります。
今回ご紹介した板厚はあくまでもよく流通しているおおよそのサイズなので、材料を取り扱う業者の規格をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
エースでは材料の調達も行っておりますので、加工や製作を依頼したいものの材料屋さん探しで難航されている方は一度当社へご相談ください。
S45Cのメリット・デメリット
S45Cは流通が多い材質のため、加工や製作のご依頼でもよくこの材料が選ばれます。
ただしメリット・デメリットがありますので、よく使われている材質だからという理由で選ぶのはおすすめしません。
ではどういったメリット・デメリットがあるのか、見ていきましょう。
■メリット
- 入手しやすい
- 安価
- SS400より硬度が高い
- 複雑な形状を出しやすい
- 表面処理で焼きを入れることができる(めっき以外)
■デメリット
- 溶接にはあまり向いていない
デメリットにあるように、実は溶接には向いていない材質です。
なぜならクラックを起こしてしまう可能性があるからです。
これは見た目で判断しづらいため、実際に製品を使用したときに割れてしまい、問題になることもあります。
そのため溶接する必要がある場合は、クラックしにくいS25Cなどが選ばれます。
エースは材質S45Cの切削加工や表面処理が可能です
エースでは、材質S45Cの切削加工や表面処理などの金属加工に対応しております。
難加工という理由で断られたという方もまずはご連絡ください。
これまでにも、当社が培ってきた技術力、そして全国300社もの協力会社との連携により解決策を導き出すなど適宜対応して参りました。
S45Cにおいては、できるだけコストを下げたいというお客様がこの材質を選ばれることが多いです。
ただ、あらゆる加工に対応している材質ではありません。
どんな加工方法に対応しているか、また用途に適した材質であるかなど不明な点があればお気軽にご相談ください。
鉄鋼・炭素鋼の加工や製作のお見積りやご依頼はこちら
鉄鋼・炭素鋼の加工や製作をご検討中の方はエースへご相談ください。
当社ではご相談内容に対し、フレキシブルに対応できるよう体制を整えておりますので、部品加工だけでなく治具やユニットの製作も一貫生産が可能です。
納期管理を徹底し、各工程ごとに検査を行うため高い品質を実現します。
お見積りやご依頼、また製作や加工についてのご相談は下記お問い合わせ先からご連絡ください。
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