2023年4月7日
SS400の黒染め加工について解説します
SS400の黒染め加工は、一般的によく行われている表面処理です。
SS400はSS材の中でも流通量の多い鋼材で、建築や機械部品などでよく使われており、安価で強度が高く、入手性が良いなど数多くのメリットがあります。
SS400の表面処理は一般的にめっきや塗装、研削などが挙げられます。
今回ご紹介する黒染め加工も、SS400でよく施される加工方法のひとつです。
どのような加工なのか、加工の基本的知識や目的、そしてメリットなどを東京都大田区の金属加工会社、エースがご紹介します!
黒染め加工とは?
黒染め加工とは化学反応によって金属表面に加工する表面処理の一種です。
黒染め加工をすると、金属表面が真っ黒な仕上がりになりますが、染料を用いて黒染めを行なっているわけではありません。
黒染め加工は、化学反応によって製品を黒さびで覆う加工方法です。
加熱したアルカリ水溶液に金属製品(鉄鋼)を浸し、鉄表面が酸化して発生した鉄酸ナトリウムが還元され、表面に黒錆(四酸化三鉄)の被膜を形成させます。
別の呼び方に『フェルマイト処理』『黒色酸化皮膜』『四酸化三鉄皮膜』などがあります。
ここでは、SS400などの鋼材に黒染めを行う目的や、加工のメリットについて説明いたします。
黒染め加工をする目的について
黒染め加工の目的は、金属表面に形成した酸化皮膜により錆の進行を防ぐことです。
金属の中でも錆の進行が早いSS400などの鉄鋼材が主な対象です。
防錆油を塗布する有機被膜による防錆方法もありますが、一定期間が経過すると油が落ちてしまいます。
SS400などの鉄鋼材を黒染め処理をし、防錆油を塗布すると更に防錆効果を上げることができます。
他の目的として、黒くて美しい見た目、つまり装飾性を目的にすることが挙げられます。
また、後処理(防錆油)との組み合わせで、防錆油を使用する事で耐摩耗性・潤滑性の向上も可能です。
黒染め加工は電極などが不要なため、他の表面処理よりも安価なので、低コストで部品に機能性を付与したい場合にも選ばれています。
加工のメリット
加工を行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。
黒染め加工は他の表面処理よりも安価で、SS400等の鉄鋼材に加工する事によって、以下のようなメリットが挙げられます。
【黒染めのメリット】
- 防錆効果があり、寸法精度も良好
- 処理後、追加工が不要
- 潤滑性など、機能の向上
- 製品に美観が与えられる
- 低コストで長持ち
上記のメリットを詳しくご紹介します。
SS400をはじめとした鉄鋼材の表面処理方法のご検討時にご参考ください。
防錆効果があり寸法精度も良好!
黒染め加工を行う理由の一つに金属表面の防錆があります。
表面を四酸化三鉄で覆うことによって、赤錆がそれ以上広がらないようにします。
表面に薄い膜を形成するため、寸法精度を求める製品や部品の場合、ご不安に感じられるかもしれません。
しかし、黒染め加工による皮膜は、1〜2μmと非常に薄いため、寸法精度を求める場合にも適していると言えます。
これは塗装や電気めっき、どぶ付けなどの手法と異なり、化学変化によって表面を加工する手法をとっているためです。
潤滑性など、機能の向上
形成した膜「四酸化三鉄」には、潤滑性など様々な機能性の向上が挙げられます。
四酸化三鉄の皮膜は熱を加えても色が変化しにくく、剥離しにくいため、高温の環境で製品を使用する事が可能です。
(ただし、200度以上の高温で使用した場合、赤錆に変化するため注意が必要です。また、黒染め処理をした母材(SS400)そのものの耐熱性は向上しません。)
また、後処理に防錆油を塗布する事で、防錆だけでなく潤滑性の向上の効果として得られます。
母材(SS400)表面に形成された四酸化三鉄は多孔質のため、潤滑油が染み込みやすい特徴があるため、用途に応じて後処理も施すことをおすすめいたしております。
※潤滑油を塗布しない場合、摩擦により加工が剥離した箇所の腐食が起きやすいという懸念があります。
高級感のある黒色(美観)
高級感のある見栄えになることも黒染めのメリットのひとつです。
処理前に光沢のあった部分は漆のように光沢のある黒色に、ツヤ消しされていた部分は光沢のないシックで光沢のない黒色に仕上げることが出来ます。
工業製品だけでなく、SS400のような安価な材料であってもインテリアやアート作品に用いることができますので、素材の活用の幅が広がります。
このように、用途の幅が広がる大きなメリットがありますが、黒染めによる防錆の効果は屋外で使用できるほどの耐久性はありません。
そのため、インテリアやオブジェなどで使用する場合は、湿度の低い屋内用の製品などへの加工方法としてお勧めいたします。
低コストで長持ち
黒染めは安価な加工方法であるというメリットもあります。
同じく安価な材料であるSS400との相性がいいです。
黒染め加工に用いるアルカリ性溶液は原価が非常に安く、電極や知具などの特別な道具も不要です。
そのため塗装やめっきなどの表面処理と比較して安価に済ませることが可能です。
また金属を溶液に浸すだけなので、大きなカゴに大量の金属を入れて処理することで一度に大量の部品を低コストで加工することも可能です。
黒塗り加工の表面は剥離しにくい性質も持つため、再加工するコストがかからないことも魅力のひとつといえるでしょう。
黒染めはSS400をはじめとした鉄鋼材に最適
黒染め加工はSS400などの鉄系炭素鋼の素材に適しています。
SS400とは大型機械や車両を設計するときに用いられており、非常に汎用性のある素材です。
SS400の特徴は以下の通りです。
- 低価格で購入することが可能
- 容易に溶接を行うことが可能
- 切削、板金などの加工が容易
SS400は耐食性が低いため、防錆効果が得られる黒染めは適しているといえます。
SS400と並んで使われることの多いS45CやSPCCにも黒染め加工は適していると言えます。
ただし、黒染めをした場合であっても、SS400は素材自体が耐食性が低いため、人命が関わるようなケース、使用環境が過酷なケースなどには不向きですので、注意が必要です。
SS400の特徴、めっきについてこちらのコラムでご紹介しています。
ぜひご覧ください。
SS400のめっきを解説!表面処理の違いや注文する時の注意点をご紹介
鉄鋼材でも不向きな素材があるので注意
鉄系炭素鋼であっても、黒染めに向いていない素材や形状もありますので注意が必要です。
鋳物や熱処理として焼入れを行った鉄鋼材、ワイヤーカットを行った鉄鋼材などは、赤茶色がかった色合いに仕上がる場合があり不向きです。
また、素材の中で例えばSKD61なども不向きです。
理由は黒染めの前処理である酸処理やショットブラスト、バレル研磨、サンドブラスト等の処理に適さないことが理由です。
アルミや銅、ステンレスも表面に四酸化三鉄を形成しないため黒染め加工は行うことが出来ません。
素材によって黒染めが不向きな場合や処理できない場合もありますので、黒染めが可能かどうか、お困りのことがありましたら当社までお気軽にご相談ください。
黒染め加工のプロセス(手順)
黒染め加工のプロセスについてご紹介します。
1、脱脂 | 脱脂剤を用い、素材の表面の汚れ(油脂)を綺麗に落とします。 |
2、酸洗い | 素材の錆や汚れを落とします。 |
3、水洗 | 水または湯で1の脱脂剤を洗い流します。 |
4、黒染め処理 | 黒染液に素材を入れ、煮沸(140℃程度)します。 |
5、水洗 | 水または湯で洗い流します。 黒錆が酸素に触れると赤錆になってしまうため、手早く素材を冷却します。 |
6、水洗 | 再度、水または湯で洗浄します。 残留溶液が製品に残らないようにしっかりと洗います。 |
7、仕上げ (防錆処理) |
防錆剤を全体に浸漬させ、防錆処理を仕上げとして行います。 |
黒染め加工は処理後、製品の表面に傷がつくと傷から錆が発生し、進行してしまいます。
また、黒染め加工はめっきよりも膜厚が薄く強度がないため、製品の用途によっては黒染め加工が不向きの場合があります。
当社は、黒染め加工のご依頼時に製品の用途をお伺いし、万が一黒染めに不向きな場合、その他の最適な表面処理をご提案いたします。
エースは金属(SS400等)の黒染め加工のご依頼を承ります
エースはSS400をはじめとした金属の黒染め加工のご相談が可能です。
今回はSS400への一般的な表面処理のひとつ、黒染め加工についてご紹介しました。
黒染め加工はSS400などの鉄鋼材に適した表面処理で、寸法精度が変わらずに摩擦防止効果や防錆など、多くのメリットがあります。
一方で、黒染め加工をしたSS400などに傷がつくとそこから錆が発生しやすいので、摺動面がある場合など、SS400であっても用途によっては黒染め加工が合わない場合があります。
このような場合は、めっきや焼入れなどの表面処理が適しています。
当社、金属加工のエースはお客様の用途をしっかりとお伺いし、最適な加工をご提案いたします。
当社は全国300以上の工場と協力関係にあるため、SS400をはじめとしたあらゆる材料、加工に対応しており、材料調達から加工、組立まで一貫してお任せいただけます。
ワンストップでお任せいただけますので、御社の業務負担の低減、コスト削減に貢献いたします。
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今回ご紹介したSS400への黒染めをはじめ、モノづくりの事で何か課題がありましたら、お気軽に当社までお問い合わせください!
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