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治具の材質選定の方法や材料の種類・特徴を金属加工業者のエースが解説します

2022年11月24日

治具の材質選定にお悩みの方へ

治具の材質選定は多くの要素を鑑みて行う必要があります。

しかし材料の種類は豊富で、必要に応じて複数の素材を組み合わせて治具を製作することもあります。

もし金属製の治具製作をお考えの方はエースへご相談ください。

金属加工会社エースは、これまでお客様の使用環境や用途にあわせた使いやすい金属性の加工治具を製作して参りました。

治具 材質選定 検査治具

どんな材料が適しているのか分からないなど、材質選定におけるお悩みもお気軽にご相談いただけます。

ご要望やご予算などをお伺いした上で、適した材質を選定いたします。

当社の加工治具については下記記事でもご紹介しておりますので、あわせて御覧ください。

加工治具の製作について詳しくはこちら

 

治具の材質選定の方法をご紹介

治具の材質選定は使用環境やコストなど、あらゆる要素を考慮した上で選定を行います。

どんな要素を考慮すべきか、ここでは、三つの要素を例に挙げてご説明します。

  • 治具の使用環境や用途・・・材料によっては環境や用途にあっていない性質を持つので、使用環境や用途にあわせて選定します。
  • 加工や表面処理・・・治具を製作するために必要となる加工に適した材質を選びます。
  • コスト・・・予算や製作時間などにかかるコストを考慮して材料を選びます。

下記では、ここでご紹介した内容を更に詳しく解説していきます。

 

用途にあった材質を選定する

治具は使用されるシーンが幅広いので、「治具の用途」や「治具の使用環境」にあった材質を選定することが重要です。

例えば、作業の際に頻繁に持ち運ぶ必要がある治具であれば、軽い材質(アルミニウムや樹脂など)が選定されます。

治具 材質選定 バイス

しかし、ワークと治具の材質の強度が同等だとワークに傷が入ってしまう可能性があるので注意が必要です。

このように、どのような用途で使用するのかによって、材質は慎重に選ばなければなりません。

また使用時の環境も考慮する必要があります。

例えば、治具が水に触れるような錆びやすい環境で使用する場合は、耐食性に優れるステンレスが治具の材質として選定されます。

用途だけでなく、温度や湿度など使用環境も考慮して素材を選ぶことで、より使いやすい治具ができます。

 

加工方法に適した材質を選定する

治具製作時には、その材質の加工性を確認しておきましょう。

製作では、切削加工のほか、表面面処理や熱処理などを必要に応じて行います。

例えばSS400という材料は、焼入れしても強度は向上しないので、熱処理に適していません。

もし高い強度が必要な場合は、S45Cなどの熱処理に適した材質を選定します。

治具 材質選定 S45C 丸棒

また、ダイス鋼やハイス鋼は熱処理を施すと加工性が損なわれ、切削加工が困難になります。

そのため、熱処理前に切削加工を行い、熱処理後に研削加工で仕上げます。

ただし、治具の製作にかかる費用や時間のコストが余分にかかります。

このように、材質が加工に適しているかを見極め、費用や時間などさまざまなコストを考慮して、材質を選定する必要があります。

 

予算にあわせて材質選定をする

治具に使用される材料は数え切れないほど種類が豊富で、材質によって価格もリーズナブルなものから、高価なものまで様々です。

一般には、治具の材質は機能性に優れるほど値段が上がる傾向にあります。

材料費を抑える必要がある場合は、比較的安価な材料を購入し、めっきなどの表面処理により機能を付与することもあります。

ただ、加工費や時間のコストがかかるので注意しなければなりません。

安価な材料でも工数が多くなる場合は、それだけ製作費用がかかってしまうことがあるからです。

予算については材料費だけでなく、加工の難易度で変わる製作費や、加工に必要な時間を把握し、治具の設計段階から考慮しなければなりません。

場合によっては、トータルコストを考えて予算を決める必要があるでしょう。

例えば強度や耐摩耗性がより高い材質を選定すれば、治具のライフサイクルが長くなります。

その結果、長期的に見た場合のトータルコストを抑えることができるケースもあります。

治具 材質選定 会議

エースではVA提案(品質を維持したままコストを抑える方法を提案すること)も行っておりますので、もしご予算の関係でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

VA提案について詳しくはこちら

 

治具に使用される材質の種類と特徴

治具によく使用される材質にはステンレス、アルミニウム、鉄、銅(真鍮)、樹脂などがあります。

それらの材質にはそれぞれ特徴があり、おおまかに「機械的性質」「物理的性質」「化学的性質」の3種類に分類されます。

材質選定をする場合には主に、下記の性質を見て検討します。

  • 機械的性質:硬度、強度
  • 物理的性質:導電性、耐熱性
  • 化学的性質:耐食性

先程挙げた材料がどのような性質を持つのか、表で分かりやすくまとめましたので材質選定の際にご参考ください。]

材質の特徴 材料名
錆びにくい ステンレス、樹脂
精度が必要 金属素材
頑丈で長持ちする ステンレス、鉄
加工しやすい アルミニウム、銅、樹脂
熱に強い ステンレス、鉄
軽い アルミニウム、樹脂
安価
絶縁性に優れる 樹脂
柔らかい アルミニウム、銅、樹脂

例えばお使いの治具でワークの素材に傷がついてしまう場合は、ワークと治具の素材の高度が同程度の可能性があります。

治具 材質選定 フロントヘッド加工治具

そのため、もし硬い素材のワークを扱う場合は、傷をつけないように柔らかいアルミニウム、銅、樹脂などを使用します。

このように素材の特性を知っておくことは、材質選定において重要なことなのです。

 

ステンレス

ステンレスは鉄を主成分として、クロム含有量が 10.5 %以上、炭素含有量が 1.2 % 以下の材質のことをいいます。

ステンレスにはクロムが含まれているので、錆びにくく強度や耐熱性に優れた材質です。

そのため、強度が必要だったり、水がかかったりすることが多い治具の材料に選定されます。

ただステンレスは他の金属に比べると切削性に劣るため、材料費と加工費の両方ともコストは高くなります。

また、ステンレスは金属組織別に「マルテンサイト系」「フェライト系」「オーステナイト系」の3種類に分類されます。

■マルテンサイト系
マルテンサイト系は焼き入れと焼き戻しの処理を行うことで、より一層、強度や耐摩耗性が高まる材質です。

例えばマルテンサイト系のSUS420J2は耐食性、強度ともに優れた材質で、焼き入れと焼戻しを行うことで強度や硬度が高まります。

そのため、治具と加工品の間で頻繁に摩擦が起こるような場合にも、長期に渡って精度を保ちます。

■フェライト系
フェライト系はマルテンサイト系とオーステナイト系の間に位置する材質です。

例えばフェライト系のSUS430は安価で広く流通しており、磁性や切削性に優れた材質です。

ただ、オーステナイト系のSUS304より、耐食性、耐熱性に劣ります。

■オーステナイト系
オーステナイト系は耐食性が高く、低温・高温環境下でも強度の低下が少ない材質です。

オーステナイト系には、一般にとてもよく使われており、流通量も多いSUS304などがあります。

SUS304は耐食性・耐熱性に優れているので、高温となる場所で使用される部品の材料に選ばれます。

 

アルミニウム

アルミニウムは金属の中で、鉄と比較して約1/3の重量と軽いのが特徴です。

そのため、治具を軽量化したい場合に選定されます。

ただ表面が腐食しやすいため、アルマイト加工など表面処理が一般的に行われます。

他の金属より軽量で加工しやすい材質なので、場合によっては作業効率化にも繋がります。

またアルミニウム合金も治具の材料として選定されることが多いです。

治具 材質選定 A6061

ここではその一部をご紹介します。

■Al-Cu系(アルミニウム+銅)
鋼材に匹敵するほど強度が高く、ジュラルミンと呼ばれるA2017などの材質があります。

高価ですが、鋼材並の強度が必要な場合はジュラルミン系の材質を選定します。

■Al-Mg系(アルミニウム+マグネシウム)
アルミニウムにマグネシウムを加えて強度と耐食性を高めた材質で、A5052などがあります。

アルミニウム合金の中では中程度の強度のA5052は、幅広く流通しており、入手しやすい材料です。

汎用性が高くて軽いので、治具製作の際によく選定されます。

ステンレスほどではないですが、耐食性もあります。

■Al-Zn-Mg系(アルミニウム+亜鉛+マグネシウム)
アルミニウムに亜鉛とマグネシウムを加えており、アルミ合金の中で最も強度が高い材質です。

「超々ジュラルミン」と呼ばれるA7075などの材質がありますが、切削性や耐食性には劣ります。

A7075は鋼とほぼ同じ強度ですが、価格はとても高いです。

 

治具で使われる鉄は、炭素を0.02〜2%含んだ炭素鋼に属します。

一般に、炭素の含有量が増えると強度と硬度が増し、靭性(粘り強さやしなやかさ)が低下します。

比較的安価で強度や加工性に優れますが、錆に弱いので必要に応じて表面処理を行います。

治具 材質選定 S45C

 

鉄鋼材の種類には「SS材」や「SC材」、「SCM材」などがあります。

■SS材:一般構造用圧延鋼材
元々は構造用に用いられましたが、汎用性が高いので幅広く使用されている材質です。

特にSS400は安価で流通量も多く、入手しやすい材料です。

炭素の含有量は約0.15〜0.2%ほどで、軟鋼に分類されます。

■SC材:機械構造用炭素鋼鋼材
SS材より炭素の含有量が高めの炭素鋼です。

その中で、S45CはSS材のSS400より、強度と硬度がともに高く、価格もSS400よりは高価です。

焼入れと焼戻しで、さらに強度や硬度を上げることができます。

S45Cの材質について詳しくはこちら

■SCM材:機械構造用合金鋼鋼材
炭素のほかにマンガン、クロム、ニッケル、モリブデンなどを適量添加したもので、SCM435などがあります。

SCM435は、焼入れ焼戻しをすることで、高い機械的性質と靭性が得られます。

そのままだと特性が活かせず、価格に見合わないので、基本的には熱処理を施してから使います。

主に強度や耐摩耗性が要求される際に選定されます。

 

銅(真鍮)

銅は加工性がよいので、高い精度が必要な場合や、アルミニウムより硬度が必要な時に選定されます。

また、延展性がよいので柔軟に変形しやすい材質です。

薄く延ばしたり細長くしたりという加工が、他の金属より簡単にできます。

銅の中でも真鍮は、亜鉛を20%以上含有している合金のことを指します。

治具 材質選定 銅

ここではその一部をご紹介します。

■黄銅1種(C2600)
絞り加工性やめっき性に優れます。

■黄銅2種( C2700)
展延性、絞り加工性に優れ、めっき性に優れます。
C2700について詳しくはこちら

■黄銅3種(C2801)
強度が高く展延性に優れる材質です。
C2801Pについて詳しくはこちら

■快削黄銅(C3604など)
高い切削性があり、他の黄銅より切削性に優れます。

 

樹脂

樹脂は、金属に比べて加工の際に精度がでにくい材質です。

そのため、治具の精度や強度、耐熱性が金属ほど必要ない場合に選定します。

また金属よりもやわらかいため、設備やワークを傷つけたくない場合にも選定されます。

しかし、硬いワークと頻繁に接するような加工では摩耗が激しくなるので注意が必要です。

また他の材料に比べて圧倒的に軽い材質で、アルミニウムの半分程度の重さです。

その他にも、絶縁性があり、錆びにくいという特徴があります。

ただ吸湿性が高い、紫外線に弱い、熱に弱いなど、環境に影響を受けやすい樹脂もあるので、治具を使用する環境に応じて適切な樹脂を選定します。

ここでは、治具に選定される樹脂の種類とその材質を一部ご紹介します。

タイプ 熱可塑性樹脂 熱硬化性樹脂
種類 汎用プラスチック エンジニアリングプラスチック スーパーエンジニアリングプラスチック
名称 ABS樹脂 MCナイロン POM PEEK シリコン樹脂
材質 絶縁性に優れる ・機械的性質に優れる
・吸湿性が高い
耐摩耗性、機械的強度、寸法安定性、耐熱性に優れる ・耐熱性、機械的強度に優れる
・価格が高い
耐熱性、電気特性、撥水性に優れる

治具の材質として、機械的強度や耐熱性を必要としない場合は、ABS樹脂などの汎用プラスチックを選定します。

プラスチックは一般的に、強度や耐熱性が低く、安価なイメージがありますが、中には金属よりも高価なものもあります。

 

材料に悩んだらエースへご相談ください

材料の種類は豊富ですが、今回は治具の材質選定でよく選ばれる一部の材料をご紹介しました。

治具 材質選定 加工の様子

さまざまな要素を考慮しながら選定するとなると大変ですが、もし金属性の治具の製作をお考えの方は、エースへご相談ください。

エースではご要望に応じて、適した材質での治具製作をご提案いたします。

材料は当社で手配することも可能です。

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